台風が過ぎたあと、いちばん多いご相談が「壊れたところを保険で直せますか」です。 九州は毎年のように大型の台風が来ますから、当然のご質問だと思います。
結論から申し上げます。台風による損害は、火災保険の「風災補償」で直せることがあります。ただし「あります」であって「あります、必ず」ではありません。経年劣化は対象外ですし、いくらから出るかは契約によって違います。
そして、この「出ることがある」という曖昧さにつけこむ業者がいます。そちらのほうが、実際の被害よりも大きな損になっている例を何度も見ています。両方まとめて、順に説明します。
火災保険なのに、なぜ台風が対象なのか
名前が「火災保険」なので火事だけだと思われがちですが、住宅の火災保険には、たいてい「風災・雹災・雪災」の補償が最初から入っています。台風・突風・竜巻による損害は、この風災にあたります。
まず、証券のこの3つを見てください
免責の決め方が、契約によって2通りあります
ここがいちばん誤解の多いところです。同じ「風災あり」でも、いくらから支払われるかの決め方が2通りあります。
| 方式 | 内容 | よくある例 |
|---|---|---|
| 損害額20万円以上で全額 | 損害額が20万円に届かなければ1円も出ない。届けば全額出る。古い契約に多い方式です | 18万円 → 0円/25万円 → 25万円 |
| 免責金額を差し引く | 決めた自己負担額(0円・1万円・3万円・5万円・10万円など)を引いた分が出ます。近年の契約に多い方式です | 免責3万円で損害25万円 → 22万円 |
どちらの方式かで、少額の被害のときの結論が正反対になります。「20万円に足りないから出ない」と言われた話と「3万円引かれただけで出た」という話が 世の中に両方あるのは、これが理由です。
太陽光パネルは、建物と家財のどちらに入っているのか
太陽光をお使いのお宅で、いちばん見落とされるのがここです。
- 屋根に架台で載せた後付けのパネル … 建物の付属設備として、建物の火災保険で見てもらえることが多いです。 ただし加入後に設置したなら、保険会社へ届け出て契約に足しておく必要があります。
- 屋根材と一体になったパネル … 屋根そのものなので、建物の補償に含まれるのが通常です。
- パワーコンディショナ・蓄電池 … 屋外の壁付けか屋内かで扱いが変わることがあります。とくに蓄電池は、あとから設置した方が多いので抜けやすいところです。
- カーポートや物置の上に載せたもの … そもそもカーポート自体が契約に入っていないことがあります。
🔴 「あとから付けたもの」は、届けていないと対象外になりえます
対象になるもの・ならないもの
風災補償が守るのは「風による、突発的な損害」です。 ここを外れるものは、契約があっても支払われません。
| 状況 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 台風でパネルが飛んだ・割れた | 🎯 対象になりえます | 強風による突発的な損害 |
| 強風で飛んできた物が当たって割れた | 🎯 対象になりえます | 風によって生じた損害 |
| 台風のあと、屋根から雨漏りが始まった | 🎯 対象になりえます | 風災で生じた破損が原因なら対象 |
| 何年もかけてコーキングが痩せて雨漏りした | 🔴 対象外です | 経年劣化。風災ではありません |
| 施工が基準を満たしておらず外れた | ⚠️ 争いになります | 施工不良は保険ではなく、施工した会社の責任の話です |
| 大雨で床上浸水した | ⚠️ 別の補償です | 水災補償の話。風災では出ません |
「施工が原因で外れた」ものは、保険ではなく施工した会社に言うべき話です。飛散の原因の多くが製品ではなく施工であることは、台風のとき、太陽光パネルはどうなるのかで書きました。あわせてお読みください。
台風のあと、その日にやること
保険を使うことになった場合、あとから効いてくるのは「その日に撮った写真」です。直してしまってからでは、壊れていた証拠が残りません。
1. 写真を撮る(片付ける前に)
- 建物の全景を、四方から1枚ずつ。どの家のことか分かるように
- 壊れた場所の寄りを数枚。割れ・ずれ・めくれが分かるように
- 落ちた物・飛んできた物も、拾う前にその場で
- 日付が入るようにする。スマートフォンで撮れば撮影日時が残ります。消さずに置いておいてください
🔴 屋根には上がらないでください
2. 保険会社に電話する
先に保険会社です。業者ではありません。証券番号を手元に置いて、契約者ご本人が連絡します。 「台風で被害が出たので、風災で見てもらえるか確認したい」と伝えれば、 あとの手順は保険会社が案内してくれます。
3. 修理の見積もりを取る
保険会社から、修理の見積書と写真を求められます。ここで初めて工事会社の出番です。見積書はどこを・どう直して・いくらかが分かれて書いてあるものをもらってください。 一式いくら、としか書いていない見積書は、保険会社の審査で止まります。
請求できるのは3年以内です
⚠️ 「保険で無料になります」と来た業者について
台風のあと、必ず回ってくる人たちがいます。言い方はだいたい決まっています。
- 「火災保険が使えます。自己負担ゼロで直せます」
- 「申請は難しいので、こちらで代行します」
- 「無料で点検します。今すぐ上がって見ましょうか」
保険金の請求は、契約者ご本人がするものです。代行業者は要りません。保険会社は無料で手順を案内してくれますし、修理の見積書は工事会社が出します。 その間に入る業者は、何をしているのでしょうか。
何が起きているか
| 言われること | 実際に起きること |
|---|---|
| 「自己負担ゼロです」 | 下りた保険金の30〜40%を手数料として取られます。残りで工事をするので、直しきれないことがあります |
| 「申請を代行します」 | 契約書に高額な違約金の条項が入っていることがあります。 下りなかったのに解約金だけ請求された例があります |
| 「無料で点検します」 | 🔴 壊れていないところを壊されることがあります。屋根に上げてしまうと、上で何をされたか誰にも分かりません |
🔴 事実と違う申請は、契約者ご本人の責任になります
訪ねてくる業者への向き合い方は、「屋根が浮いています」と訪ねてきた人に、どう答えるかにまとめました。その場で契約しない、屋根に上げない。この2つだけ覚えていただければ十分です。
当社ができること
当社は保険の代理店ではありません。保険金の請求代行もしません。できるのは次の3つです。
- 被害の状況を見て、直し方と金額をお出しすること(保険会社に出せる形の見積書)
- それが風災によるものか、経年によるものかを、見たまま申し上げること。 経年だと思えば、そう申し上げます
- 実際に直すこと。太陽光・屋根まわり・外構のいずれも承ります
保険が下りるかどうかを決めるのは保険会社です。当社が約束できることではありません。「必ず下ります」と言う会社があれば、その一点だけで疑ってよいと思います。
まとめ
- 台風の損害は火災保険の風災補償で直せることがあります。まず証券を見てください
- 免責の決め方が2通りあります。20万円に届かないと出ない契約と、 自己負担額を引く契約です
- あとから付けた太陽光・蓄電池・カーポートは、届け出ていないと対象外になりえます。台風の前に確認を
- 経年劣化は対象外です。施工が原因なら、保険ではなく施工した会社の話です
- 被害が出たら片付ける前に写真。連絡は業者より先に保険会社へ
- 請求できるのは3年以内。ただし早いほうが通ります
- 🔴 「保険で無料」と来た業者は、その場で契約せず、屋根にも上げないでください
ご自宅の状況を見てほしい、見積書だけ出してほしい、というご相談も承っています。保険が使えるかどうかの当たりを付けたいだけ、という段階でも構いません。