台風で壊れたとき、火災保険はどこまで使えるのか

台風による損害は火災保険の風災補償で直せることがあります。ただし経年劣化は対象外で、いくらから出るかは契約によって2通りあります。あとから付けた太陽光や蓄電池は届け出ていないと対象外になりえます。「保険で無料になります」と来た業者への向き合い方まで、順に説明します。

判断のしかた2026年8月31日10分で読めます

台風が過ぎたあと、いちばん多いご相談が「壊れたところを保険で直せますか」です。 九州は毎年のように大型の台風が来ますから、当然のご質問だと思います。

結論から申し上げます。台風による損害は、火災保険の「風災補償」で直せることがあります。ただし「あります」であって「あります、必ず」ではありません。経年劣化は対象外ですし、いくらから出るかは契約によって違います。

そして、この「出ることがある」という曖昧さにつけこむ業者がいます。そちらのほうが、実際の被害よりも大きな損になっている例を何度も見ています。両方まとめて、順に説明します。

火災保険なのに、なぜ台風が対象なのか

名前が「火災保険」なので火事だけだと思われがちですが、住宅の火災保険には、たいてい「風災・雹災・雪災」の補償が最初から入っています。台風・突風・竜巻による損害は、この風災にあたります。

まず、証券のこの3つを見てください

ご自身の契約がどうなっているかは、保険証券を見れば分かります。見るのは3か所だけです。① 風災補償が付いているか② 免責金額(自己負担額)はいくらか③ 建物と家財、どちらに入っているか。 分からなければ、証券に載っている保険会社の窓口に電話すれば教えてもらえます。

免責の決め方が、契約によって2通りあります

ここがいちばん誤解の多いところです。同じ「風災あり」でも、いくらから支払われるかの決め方が2通りあります。

方式内容よくある例
損害額20万円以上で全額損害額が20万円に届かなければ1円も出ない。届けば全額出る。古い契約に多い方式です18万円 → 0円/25万円 → 25万円
免責金額を差し引く決めた自己負担額(0円・1万円・3万円・5万円・10万円など)を引いた分が出ます。近年の契約に多い方式です免責3万円で損害25万円 → 22万円

どちらの方式かで、少額の被害のときの結論が正反対になります。「20万円に足りないから出ない」と言われた話と「3万円引かれただけで出た」という話が 世の中に両方あるのは、これが理由です。

太陽光パネルは、建物と家財のどちらに入っているのか

太陽光をお使いのお宅で、いちばん見落とされるのがここです。

  • 屋根に架台で載せた後付けのパネル … 建物の付属設備として、建物の火災保険で見てもらえることが多いです。 ただし加入後に設置したなら、保険会社へ届け出て契約に足しておく必要があります。
  • 屋根材と一体になったパネル … 屋根そのものなので、建物の補償に含まれるのが通常です。
  • パワーコンディショナ・蓄電池 … 屋外の壁付けか屋内かで扱いが変わることがあります。とくに蓄電池は、あとから設置した方が多いので抜けやすいところです。
  • カーポートや物置の上に載せたもの … そもそもカーポート自体が契約に入っていないことがあります。

🔴 「あとから付けたもの」は、届けていないと対象外になりえます

火災保険は契約したときの建物を守るものです。 太陽光・蓄電池・カーポート・外構をあとから設置したのに保険会社へ伝えていないと、 いざというときに「その設備は契約に入っていません」となることがあります。台風が来る前に、一度だけ確認しておく価値があります。

対象になるもの・ならないもの

風災補償が守るのは「風による、突発的な損害」です。 ここを外れるものは、契約があっても支払われません。

状況扱い理由
台風でパネルが飛んだ・割れた🎯 対象になりえます強風による突発的な損害
強風で飛んできた物が当たって割れた🎯 対象になりえます風によって生じた損害
台風のあと、屋根から雨漏りが始まった🎯 対象になりえます風災で生じた破損が原因なら対象
何年もかけてコーキングが痩せて雨漏りした🔴 対象外です経年劣化。風災ではありません
施工が基準を満たしておらず外れた⚠️ 争いになります施工不良は保険ではなく、施工した会社の責任の話です
大雨で床上浸水した⚠️ 別の補償です水災補償の話。風災では出ません

「施工が原因で外れた」ものは、保険ではなく施工した会社に言うべき話です。飛散の原因の多くが製品ではなく施工であることは、台風のとき、太陽光パネルはどうなるのかで書きました。あわせてお読みください。

台風のあと、その日にやること

保険を使うことになった場合、あとから効いてくるのは「その日に撮った写真」です。直してしまってからでは、壊れていた証拠が残りません。

1. 写真を撮る(片付ける前に)

  • 建物の全景を、四方から1枚ずつ。どの家のことか分かるように
  • 壊れた場所の寄りを数枚。割れ・ずれ・めくれが分かるように
  • 落ちた物・飛んできた物も、拾う前にその場で
  • 日付が入るようにする。スマートフォンで撮れば撮影日時が残ります。消さずに置いておいてください

🔴 屋根には上がらないでください

台風のあとの屋根は、濡れていて、割れていて、踏むと抜けます。毎年、点検のために屋根に上がった方が落ちています。地上から望遠で撮るだけで十分です。上からの写真が要るなら、業者に任せてください。

2. 保険会社に電話する

先に保険会社です。業者ではありません。証券番号を手元に置いて、契約者ご本人が連絡します。 「台風で被害が出たので、風災で見てもらえるか確認したい」と伝えれば、 あとの手順は保険会社が案内してくれます。

3. 修理の見積もりを取る

保険会社から、修理の見積書と写真を求められます。ここで初めて工事会社の出番です。見積書はどこを・どう直して・いくらかが分かれて書いてあるものをもらってください。 一式いくら、としか書いていない見積書は、保険会社の審査で止まります。

請求できるのは3年以内です

保険金を請求する権利は、保険法で3年で時効と定められています。「去年の台風の分は、もう無理ですか」というご質問をよくいただきますが、 3年以内なら請求できます。ただし年月が経つほど、その台風が原因だと示すのが難しくなります。早いほうが通ります。

⚠️ 「保険で無料になります」と来た業者について

台風のあと、必ず回ってくる人たちがいます。言い方はだいたい決まっています。

  • 「火災保険が使えます。自己負担ゼロで直せます」
  • 「申請は難しいので、こちらで代行します」
  • 「無料で点検します。今すぐ上がって見ましょうか」

保険金の請求は、契約者ご本人がするものです。代行業者は要りません。保険会社は無料で手順を案内してくれますし、修理の見積書は工事会社が出します。 その間に入る業者は、何をしているのでしょうか。

何が起きているか

言われること実際に起きること
「自己負担ゼロです」下りた保険金の30〜40%を手数料として取られます。残りで工事をするので、直しきれないことがあります
「申請を代行します」契約書に高額な違約金の条項が入っていることがあります。 下りなかったのに解約金だけ請求された例があります
「無料で点検します」🔴 壊れていないところを壊されることがあります。屋根に上げてしまうと、上で何をされたか誰にも分かりません

🔴 事実と違う申請は、契約者ご本人の責任になります

「経年劣化を台風のせいにして出しましょう」と持ちかけられることがあります。これは保険金の詐取にあたりえます。そして、申請したのは業者ではなく契約者ご本人です。 業者は手数料を取っていなくなります。責任は残ります。

訪ねてくる業者への向き合い方は、「屋根が浮いています」と訪ねてきた人に、どう答えるかにまとめました。その場で契約しない、屋根に上げない。この2つだけ覚えていただければ十分です。

当社ができること

当社は保険の代理店ではありません。保険金の請求代行もしません。できるのは次の3つです。

  • 被害の状況を見て、直し方と金額をお出しすること(保険会社に出せる形の見積書)
  • それが風災によるものか、経年によるものかを、見たまま申し上げること。 経年だと思えば、そう申し上げます
  • 実際に直すこと。太陽光・屋根まわり・外構のいずれも承ります

保険が下りるかどうかを決めるのは保険会社です。当社が約束できることではありません。「必ず下ります」と言う会社があれば、その一点だけで疑ってよいと思います。

まとめ

  • 台風の損害は火災保険の風災補償で直せることがあります。まず証券を見てください
  • 免責の決め方が2通りあります。20万円に届かないと出ない契約と、 自己負担額を引く契約です
  • あとから付けた太陽光・蓄電池・カーポートは、届け出ていないと対象外になりえます。台風の前に確認を
  • 経年劣化は対象外です。施工が原因なら、保険ではなく施工した会社の話です
  • 被害が出たら片付ける前に写真。連絡は業者より先に保険会社
  • 請求できるのは3年以内。ただし早いほうが通ります
  • 🔴 「保険で無料」と来た業者は、その場で契約せず、屋根にも上げないでください

ご自宅の状況を見てほしい、見積書だけ出してほしい、というご相談も承っています。保険が使えるかどうかの当たりを付けたいだけ、という段階でも構いません。

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